睡眠の質とパジャマの関係

なぜパジャマで睡眠の質が変わるのか

日本人は他国と比べても睡眠時間が短く、約6割以上の人が「自分の睡眠の質は高くない」と感じているという調査結果があります。実際、「寝ても疲れが取れない」と感じる人が非常に多いのです。

一方で、睡眠の質に意識の高い人ほどパジャマやリカバリーウェアなど専用の寝間着を使用する傾向があり、睡眠を重視する人の93%近くがパジャマ派だったとのデータも報告されています。つまり、快眠を求めるなら寝る時の服装にこだわる価値があるということです。

パジャマが体温調節をサポートする

パジャマ最大の役割は、睡眠中の汗を吸って放出することにあります。人は眠りに入る際に体温（深部体温）を下げる必要がありますが、汗が蒸発して肌表面から熱を奪うことで体温低下を促し、スムーズな入眠につながります。

実際、オーガニックコットン素材のパジャマに替えたところ、寝つきの時間が短縮し途中覚醒（夜中に目が覚めること）が減少したという実験結果もあります。逆に厚手すぎる部屋着や衣類で寝ていると、就寝後に体が熱を持ちすぎてしまい、深い眠りが妨げられる恐れがあります。

海外の研究でも、睡眠中の皮膚温度を適切に保つことで夜間の覚醒回数が減り深い睡眠時間が増加したと報告されています。パジャマは寝ている間の体温調節をサポートする重要なアイテムなのです。

肌触りや着心地も睡眠の質に直結

パジャマの肌触りや着心地も睡眠の質に直結します。例えば、生地がごわごわしていたりチクチクすると、その刺激がストレスとなって脳が興奮状態になり、リラックスできません。

睡眠専門医の坪田聡先生は「痛みやかゆみなど不快な刺激があると交感神経が優位になって寝つけなくなる。一方、摩擦の少ないなめらかな肌触りのパジャマは副交感神経を優位にし、脳をリラックスさせるので睡眠の質がアップする」と指摘しています。

特に40代以降の女性は肌が乾燥しがちでチクチク感を敏感に感じるため、パジャマはできるだけ肌ざわりの良い素材を選ぶことが大切です。

デザインやサイズ感も快眠のポイント

さらに、パジャマのデザインやサイズ感にも注意しましょう。締め付けの強い服（首元やウエスト・袖口がきついもの）は血行やリンパの流れを妨げ、リラックスを阻害します。

実際、靴下の跡がくっきり残るほど締め付けが強いと、それだけで足の血流が制限され睡眠中の体温調節に悪影響を及ぼします。加えて、窮屈な服装では寝返りも打ちにくくなります。

人は一晩に10～30回ほど寝返りを打つと言われ、寝返りには布団内の熱や湿気を逃がしたり血液循環を促す大事な役割があります。生地が体に張り付くような寝間着だと寝返りのたびに引っ張られてしまい、眠りが浅くなる原因にもなりかねません。

パジャマはゆったりと動きやすいサイズで、ゴムやボタンも圧迫感の少ない設計になっているものが理想です。

着替える習慣が快眠につながる

最後に、「パジャマに着替える」という行為自体が快眠につながる点も見逃せません。普段着や部屋着のまま布団に入るよりも、「寝る前に専用のパジャマに着替える」ことを習慣づけるほうが脳がスムーズに睡眠モードへ切り替わります。

専門家の間ではこれをスリープセレモニー（入眠儀式）と呼び、良質な睡眠のために取り入れるべき工夫と言われています。実際、毎晩パジャマに着替えて寝る人はそうでない人より睡眠意識が高く、快眠のための環境づくりに積極的です。

裏を返せば、せっかくの快眠のチャンスを逃さないためにもパジャマを活用すべきと言えるでしょう。

快眠パジャマの選び方：素材・生地・デザインのポイント

快眠のためのパジャマを選ぶ際には、いくつか押さえておきたいポイントがあります。ここでは「サイズ・着心地」「素材（繊維）」「生地の織り/編み方」「機能性」の４つの観点から、最適なパジャマの選び方を解説します。

サイズ・着心地はゆったりめが基本

パジャマはリラックスして寝るための衣類ですから、サイズは体を締め付けないゆったりめを選ぶのが基本です。肩や胸まわり、ウエストに余裕があり、寝返りを打っても生地が突っ張らないデザインが理想的です。

ジャストサイズすぎる服やボディスーツのようなピタピタの部屋着で寝るのは避けましょう。締め付け感があると血流が悪くなり体が十分に休まりませんし、前述のように寝返りもしにくくなってしまいます。

パジャマのウエストゴムや袖口もきつすぎないものを選び、跡が残るようなら調整や買い替えを検討しましょう。

おすすめのデザインとは

デザインとしては、前開き（ボタン式）のトップスと長ズボンの上下セットが一般的です。前開きタイプは着替えやすいだけでなく、就寝中に生地が体に巻き付かず寝返りしやすい利点があります。

また、袖口や裾まわりが広めで風通しが良いデザインだと、寝汗で布団内に熱がこもるのを防ぐ効果もあります。夏場でもできれば長袖長ズボンが望ましく、冷房でひざやひじなど関節を冷やさないようにすることで快適な眠りにつながります。

さらに、就寝時はなるべく下着も身体を締め付けないラクなものに替え、女性はブラジャーを外すなど身体を解放してあげることも大切です。寝るとき専用のゆるやかなインナーを着用すると安心感も得られておすすめです。

素材（繊維）は天然素材を中心に

パジャマに使われる生地の素材（繊維）にも注目しましょう。結論から言えば、綿やシルク、麻などの天然素材が快眠パジャマに向いています。天然繊維は吸湿性・通気性に優れ、肌触りも良いものが多いためです。

綿（コットン）

パジャマ素材の定番で、肌にやさしく適度な吸湿性・保温性を持ちます。汗をよく吸い取り、オールシーズン快適な天然繊維です。

綿は丈夫で洗濯にも強く、お子様から大人まで扱いやすい点も魅力です。特にガーゼやパイル状など加工次第で感触や厚みを調整でき、幅広い季節に対応します。

絹（シルク）

繭から作られる高級天然繊維で、人間の肌と似たタンパク質成分を持つため非常に肌触りが滑らかです。シルクは吸放湿性にも優れ、夏は涼しく冬は暖かいという調温効果があります。

ただしデリケートで洗濯に気を使う点や価格が高めな点は注意が必要です。特別な快眠アイテムとしてシルクパジャマを一着持っておくのも良いでしょう。

麻（リネン）

麻は代表的な夏向け天然繊維です。通気性・速乾性が極めて高く、汗をかいても肌に張り付きにくい爽やかな着心地が特徴です。

麻特有のシャリ感ある触感は、寝苦しい夜でもべたつきを感じにくくしてくれます。ただし綿やシルクに比べると生地がざらっとして硬めなので、肌が敏感な方は麻100%より綿麻混紡などを選ぶと良いでしょう。

化学繊維（ポリエステル等）について

化学繊維単体のパジャマは、シワになりにくく軽いといったメリットはあるものの吸湿性が低くムレやすいため基本的にはおすすめしません。特にポリエステル100%の生地は汗を吸わず蒸れやすいため、夏の寝間着には不向きです。

一方で、綿にポリウレタン（ストレッチ素材）を数％混ぜて伸縮性を持たせたり、ポリエステルを混紡して速乾性や軽さを高めた生地もあります。こうした綿混紡素材であれば綿の良さを保ちつつ洗濯後乾きやすい、シワになりにくいなど扱いやすさが向上します。

生地の織り方・編み方にも注目

同じ綿や麻でも、生地の織り方や編み方によって風合いや適した季節が異なります。パジャマによく使われる代表的な生地の種類と特徴を押さえておきましょう。

織物（機織りで織った生地）

通年使いやすいのがガーゼやブロード（平織り）などの綿織物です。中でも二重ガーゼは薄手のガーゼ生地を二重に重ねて織ったもので、空気を含むため適度な保温性と高い吸湿性を兼ね備えています。

二重ガーゼパジャマは肌寒い時期から暑い時期まで長いシーズン活躍する万能選手です。夏本番にはサッカー生地やくれちじみ（楊柳）と呼ばれる生地もおすすめです。これらは生地表面にシワや凹凸があるため肌にベタっと貼り付かず、汗をかいてもさらさらと快適な着心地を保てます。

一方、冬向けの綿織物にはフランネルがあります。フランネルは平織りや綾織りの綿生地を起毛加工しており、柔らかな起毛面が空気を含んで暖かさを感じられます。フランネル生地のパジャマは保温性が高く、冬場に人気です。

ニット（編み物）生地

代表的なのは天竺（てんじく）ニットとスムースニットです。天竺はTシャツによく使われるシングルジャージー編みで程よい薄さと伸縮性があり、春や秋に適しています。

スムースは天竺を二重に編んだような構造で、生地に厚みがありながら滑らかで伸びも良いのが特徴です。スムース生地のパジャマは保温性と柔らかさを併せ持つため、春秋だけでなく冬のインナーにも重宝します。

さらに寒い季節向けには、裏側に綿毛布のようなパイル（ループ状）の編み地を持つパイルニットや、中綿を挟んでキルト状にしたニットキルト素材のパジャマもあります。例えば綿パイル生地はタオルのようにふんわりとして吸湿発散性と保温性が高く、冷えが気になる方に適した素材です。

機能性パジャマの活用（リカバリーウェアなど）

近年は快眠のための機能性パジャマも数多く登場しています。中でも注目されているのがリカバリーウェアと呼ばれるタイプです。

リカバリーウェアとは

リカバリーウェアとは、着て眠るだけで身体の疲労回復をサポートしてくれるパジャマのことです。例えば、生地に特殊な鉱石粒子や金属を練り込んであるものがあり、人間の体から放射される遠赤外線を反射・共鳴させて体を内部からじんわり温め、血行を促進する仕組みになっています。

これにより筋肉のこりをほぐし、自律神経を副交感神経優位に整えてリラックス効果を高めるとされています。実際、プロスポーツ選手からデスクワーク疲れの社会人まで、多くの人がこの着るだけケアの効果を実感し始めており、市場でも人気が高まっています。

具体的な製品例

具体的な製品では、ナノセラミックスや鉱石を繊維に配合した生地を使った遠赤外線パジャマ、微弱な磁気を発生させ血流を促す磁気付きパジャマ、着圧によって血行を良くする着圧ソックス・スパッツタイプのナイトウェアなど、様々なアプローチの快眠ウェアがあります。

中には医療機器として一般医療機器認証を取得したパジャマもあり、科学的エビデンスに基づく効能が認められているものも存在します。こうした高機能パジャマを活用すれば、短い睡眠時間でも効率良く体を休めたり、日中の疲労を翌朝までにリセットしやすくなることが期待できます。

特に「朝起きても体がだるい」「慢性的に疲れが抜けない」という方は試してみる価値があるでしょう。

ただし、機能性ばかり重視して基本的な着心地が犠牲になっては本末転倒です。リカバリーウェア等も自分に合ったサイズを選び、説明書に従った着用時間・着用方法で正しく使うことが大切です。

季節別おすすめパジャマ：季節に合った快眠素材とは

日本には四季があり、季節によって寝室の環境や適した寝間着も変わります。季節ごとに最適なパジャマ素材や生地を選ぶことで、一年中快適な睡眠をサポートしましょう。

春・秋におすすめのパジャマ

季節の変わり目である春と秋は、寒暖差に対応できるパジャマ選びが大切です。朝晩は冷え込むけれど日中は暖かい、といった気温変化に対応するには調温効果のある素材が適しています。

中でもおすすめはシルク（絹）素材のパジャマです。例えばシルク100%の天竺ニットパジャマは、肌寒い春先でも冷えすぎず、逆に秋口の残暑でも蒸れにくいという特徴があります。シルクは寝具業界で「天然繊維の女王」とも呼ばれ、吸放湿性と保温・放熱調節に優れているため、一年を通して快適さを保ってくれる素材です。

春秋の生地としては、厚みがありつつ柔らかなスムースニットや、適度なハリのある綿サテン生地なども良いでしょう。スムースニットは両面編みのしっかりしたニット生地で伸縮性が高く、寝返りを妨げません。特に春先から秋口にかけてはスムース生地＋シルク混紡素材のパジャマなどが快適です。

また、日中との寒暖差が大きい時期は体調を崩しやすいため、薄手の上着やレッグウォーマーなどで体温調節できるようにしておくのもおすすめです。春・秋は過ごしやすい季節ですが、寝冷えや汗冷えに注意しつつ、快眠パジャマで上手に体温をコントロールしましょう。

夏におすすめのパジャマ

暑く湿度の高い日本の夏を快適に眠るには、通気性と吸湿性に優れたパジャマが欠かせません。

夏の快眠素材の定番

夏の快眠素材としてまず挙げられるのが麻（リネン）です。リネンはシャリ感のある涼しい肌触りで、汗をかいてもすぐに乾き、肌にまとわりつきません。蒸し暑い夜でもリネンパジャマを着れば、寝苦しさがかなり軽減されるでしょう。

同じく人気なのが綿のガーゼ生地です。特に一重ガーゼや二重ガーゼのパジャマは非常に軽くて通気性が良く、寝汗をしっかり吸い取って放湿してくれます。「汗っかきで夜中に汗だくになる」という方は、薄手ガーゼパジャマを試してみる価値があります。

避けたい素材

一方、避けたいのはポリエステルなど化学繊維100%のパジャマです。ポリエステル素材は汗をほとんど吸わないため、夏に着ると蒸れて不快になりがちです。

最近は接触冷感素材（触るとひんやり感じる生地）を使ったパジャマや枕カバー・敷パッドなども多く出ています。冷感素材そのものは主にポリエステル系ですが、寝具に使用する分には汗をすぐ乾かしてくれる利点があります。

夏の快眠対策

夏の快眠対策としては、エアコンや扇風機で室温・湿度を調整しつつ、麻や綿ガーゼのパジャマ＋冷感寝具で熱を逃がし汗をこもらせない工夫が有効です。

なお、冷房をつけて寝る場合は体が冷えすぎないよう注意しましょう。薄手でも長袖長ズボンのパジャマを着ていれば直接肌が冷風にさらされず安心です（それでも暑い場合はタイマー設定や風向きを調整して、寝始めだけ冷房が当たるようにすると良いでしょう）。

冬におすすめのパジャマ

寒い冬の夜に備えるパジャマは、暖かさを保ちつつ汗を吸ってくれる素材が重要です。人間は冬でも意外と寝汗をかきます。厚着しすぎて汗をかき、その汗が冷えて体を冷やす...という悪循環を防ぐには、吸湿発散性の高い素材が適しています。

冬の定番素材

おすすめは綿（コットン）素材のパジャマです。綿は汗を吸収しつつ適度に保温してくれるため、冬パジャマの定番と言えます。特に冬向けには次のような綿生地があります。

綿フランネル：綿織物を起毛加工したフランネル生地。表面がうっすら起毛しているため空気を含んで暖かく、肌触りも柔らかです。フランネルのパジャマを着るとじんわり暖かさを感じ、寒い冬にぴったりでしょう。

綿パイル（パイル地）：糸をループ状に織り出したタオル生地の一種で、裏地がタオルのようにふわふわです。吸湿性・保温性に優れ、肌に触れると暖かく感じます。パイル地パジャマは軽い毛布を羽織っているかのような温もりがあり、冷え性の方におすすめです。

この他、綿とポリエステルの混紡フリース生地や裏起毛のスウェット生地のパジャマも冬場には人気です。フリース素材は非常に軽くて暖かいのがメリットですが、汗をあまり吸わない点には注意しましょう。厚手でも綿を含む生地のほうが長時間着ていて蒸れにくい傾向があります。

冬の注意点

寒いからといってあまりにもモコモコの部屋着を何枚も重ね着して眠ると、逆に寝苦しくなり深い睡眠が得られません。布団や毛布とのバランスを考え、程よい厚みの暖かいパジャマを1枚着て眠るほうが、体も楽に休まります。

冷えが厳しい夜は、湯たんぽを入れたり靴下を活用したりして足元を温めるのも効果的です。眠っている間に足先が冷えると寝つきが悪くなるため、就寝用のゆるめの暖かい靴下を履くのも一つの方法です。

寝室自体もあまり寒すぎないよう室温を調整し、温かいパジャマと合わせて快眠環境を整えましょう。

まとめ：睡眠の質を上げるパジャマで毎晩ぐっすり

最後に、本記事のポイントを簡単にまとめます。パジャマ選びのコツを押さえて、今日から睡眠環境をグレードアップしましょう。

• パジャマは睡眠環境の一部です。肌触りや吸湿性に優れたパジャマに替えるだけで、寝つきが良くなり途中で目覚めにくくなるなど睡眠の質向上が期待できます。
• サイズはゆったり、締め付けゼロを意識しましょう。窮屈な服は血行を妨げリラックスできません。パジャマはワンサイズ余裕があるくらいでちょうど良く、前開きデザインや柔らかいゴムでストレスフリーな着心地を選びます。
• 素材選びが快眠の鍵。パジャマの生地は綿・シルク・麻といった天然素材がおすすめです。季節に応じてガーゼやフランネルなど織り方にも注目し、夏は通気性、冬は保温性を重視した生地を選びましょう。ポリエステル主体の生地は汗で蒸れやすいので要注意です。
• 季節別パジャマを用意する。春秋はシルク混など年間通して使える調温素材、夏は麻や薄手コットン、冬は起毛コットンやパイルなど季節に合ったパジャマが快眠を助けます。季節ごとに最適な寝間着に衣替えすることで、一年中快適な睡眠環境が維持できます。
• パジャマに着替える習慣を。部屋着でそのまま寝るより、寝る前にパジャマに着替えることで脳が「睡眠モード」に切り替わります。心身をリラックスさせる入眠儀式として、毎晩のパジャマ習慣を大切にしましょう。

快眠のためには寝具や室温・照明など総合的な環境づくりも重要ですが、パジャマは誰でも手軽に見直せるポイントです。ぜひ本記事の内容を参考に、ご自身やご家族にピッタリの快眠パジャマを選んでみてください。

質の高い睡眠で疲れをしっかり取り、毎日の健康とパフォーマンス向上につなげていきましょう！

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